25歳、農業経験なし。ゼロからのスタートで農家に転身した彼の、里山の魅力を伝える新たな取組み。25歳、農業経験なし。ゼロからのスタートで農家に転身した彼の、里山の魅力を伝える新たな取組み。

よごれながらも自分の道を拓くために⽇々頑張っている30歳の挑戦者たち。
この連載では、彼らの挑戦を紹介します。

25歳で農業の世界へ

ー かつては、国立公園のガイドや、青少年自然の家で自然との関わり方を伝える仕事に従事されてたそうですが、なぜ農業を始めたのですか?

小さい頃から自然や生き物が好きで、自然環境や野生動物を守るプロを育成する専門学校を卒業しました。経験を積むにつれ、もっと視野を広げたいと思っていたところ、ちょうど「祖父の田んぼを継ぐ人がいない」という話が舞い込んだんです。長野県佐久市には母の実家があって、祖父の田んぼには、子どもの頃に夏休みを過ごした思い出が詰まっていました。

その田畑を守ることは、里山の環境を守ることにもつながる。僕にも何かできることがあるんじゃないかと思ったんです。当時25歳、農業経験がなく不安はありましたが、「今ならまだ挑戦できる」と思い決断しました。

土の力を育むために

ー 技術はどうやって習得したのですか?

新規就農希望者向けの研修制度が各地にあるので、まずは、インターネットで受け入れ先を探しました。そこで出会った有機農家の門を叩き、1年間の研修を経て佐久市へ移住しました。農園を開いた2013年の春から、農薬も除草剤も化学肥料も使わない、持続可能な循環型農法に取り組んでいます。

肥料の代わりに、もみ殻や木のチップを土に混ぜて微生物の活動を促します。野菜に必要な栄養は微生物が作り出し、野菜は光合成をして根から微生物に栄養を与えます。僕は、この「相互関係」「活かし合い」を生み出すお世話をしているんですね。水もあげない、雨に任せるだけです。具体的には、最初は水が必要なので、雨が降る前日に急いで種を蒔いたりするんですね、そうして一回発芽して根が張りさえすれば、あとは自然の力に任せて「がんばれ」という感じなんです。ただ、環境づくりには時間がかかります。ようやく3年目くらいから、自信を持って野菜づくりができるようになりました。

農業の新たな可能性を見出したい

ー 農園では当初から、農業体験や環境を活かした体験型イベントを提供していますが、どんな思いから企画したのですか?

ネイチャーガイドをしていた頃から「人と関わることが好き」という気持ちは変わっていません。農業をしながらも、僕ならではのやり方で、土地の魅力を活かしながら多くの人を呼びたいと思ったんです。田植えや稲刈り体験を通して、作り手と消費者がつながりながら里山の魅力を楽しむ、そんな「農業体験の喜び」が地域にもたらす効果にも期待しています。
実は、この夏から、佐久市で環境活動に取り組むIT企業と一緒に「田舎体験」を提供することになったんです。一過性で終わらない、人と地域をきちんと結びつけるような田舎体験を企画したいという考え方に共感しました。僕がずっと思ってきたことが少しずつ形になってきています。

大切なのは「土地に根ざす」こと

ー 新規就農を実現する上で、大切だと思うことは何ですか?

就農先の地域にきちんと入っていくことが大切だと思います。その一歩さえ踏みだせれば、あとは一生懸命やっていれば、必ず周りの人がみていて声をかけてくれると思います。僕の場合はありがたいことに、祖父が僕と地域をつなげてくれて、田畑を広げていくことができました。

僕の周りの新規就農者は、研修先の農家さんがその役割を担ってくれるケースが多いですね。田畑を借りて、住んで、しっかりとその土地に根ざすことで、自ずと思いも伝わると思います。

ー 磯村さんにとって、「汚れ」とは?

「地に足をつけて生きていきたい」とよく言葉にするんですけど、僕にとっての「地」は「土地」という意味もあるし「土」という意味でもあるんですね。日々の作業でよごれれば、よごれるほど、この土地や土に近づいていくような感覚が、僕の中に確かにあるんです。田植えなんかものすごくよごれるんですけど、よごれた分だけ、作物や水、土、生き物といった「自然」と一緒にこの場所にいるような気持ちになります。土地とつながる、土と共に生きる、そんな感覚をもたらしてくれるものなのかなと思います。

“汚れは、自然と共に生き、土地とつながる声。”

SHARE THIS PAGE

Back Number