日本人として唯一人、世界選手権の優勝トロフィーに名を刻む男。熱気球の傍には、ただひたすらに、世界の空に挑みつづける若きパイロットの姿があった。日本人として唯一人、世界選手権の優勝トロフィーに名を刻む男。熱気球の傍には、ただひたすらに、世界の空に挑みつづける若きパイロットの姿があった。

よごれながらも自分の道を拓くために⽇々頑張っている30歳の挑戦者たち。
この連載では、彼らの挑戦を紹介します。

父の夢が僕の中に生きている

ー 日本熱気球界の草分け的存在である父・昌彦さんと幼少期から大会を転戦。熱気球の最初の記憶は?

小学校低学年の頃にアメリカの大会で、父の気球に乗ってバナナを食べている記憶ですね。「バナナの皮をターゲットに投げる」というローカル大会ならではの競技だったんですよ。幼い頃から国内外のいろんな大会に連れて行ってくれたので、父への憧れの気持ちから自然と「いずれ同じ道に行くんだろうな』と思うようになりました。

18歳でライセンスを取得して操縦するようになってからは、憧れのパイロットたちと勝負できるという喜びがありました。父のサポートをしながら、世界を目指して努力する姿をずっと見てきたので、自ずと彼のセンスや想いが僕に伝わったのかなと思いますね。

のんびりとしたイメージの裏で繰り広げられる“頭脳戦”

ー 現在は、父・昌彦さんにサポートされる側ですね。

熱気球は「目的地にいかに正確に近づけるか」を競い合う、ゴルフのようなポイント制のゲームなんですね。地上付近の風の情報を伝えてくれる地上クルーとのコンビネーションで風を掴まえて、目的地に近づいていきます。

ただ、僕がコントロールできるのは、バーナーを焚いて上昇するか、空気を抜いて下降するという「上下の動き」だけで、横の移動は“風まかせ”なので、行きたい場所に行くのはすごく難しいんですよ。

刻一刻と変わる風を読む感覚や一瞬の判断の遅れが勝敗を分けます。ふわふわ飛んでいるように見えて、実は操縦の正確性以外にも沢山の技術を必要とするスポーツです。

風を掴まえる

ー 良い風を掴まえる秘訣は何ですか?

高さによっていろんな風が吹いているので、地上クルーからの情報やデータを得ながらも、やはり最終的には、パイロットが自分の「感性」で判断する力が必要です。「いかに冷静に場を見極めるか」というのが重要なポイントですね。

どんなにテクノロジーが進んでも、最終的なアプローチって、絶対「感性」の方が強いと思うんですよ。競技会では、そういった所が実力として表れてくるので、運だけではどうしても勝てない世界です。

うまく風を掴めた時は、空と気球と自分の一体感を感じて、ものすごく自由な気持ちになりますし、楽しいです。ここが気球の魅力かなと思いますね。

世界一への「挑戦」はここから

ー 昨年の世界選手権では、残念ながら2連覇はなりませんでした。この先に今、何を見ていますか?

実は、2014年の優勝は、世界のトップ選手たちに挑戦している喜びを感じる中でポッと転がってきたような感じで、自分の実力というよりは「両親の想いが夢の実現に結びついたのかな」という思いが強かったんですね。

2連覇がかかった重圧に耐えきる精神力がなかったと痛感しています。タイトルを獲ってからの自分は、経験値や判断力がものをいうベテランパイロットが沢山いる中で、挑戦していくという謙虚な気持ちが薄れていたとも感じました。だから今は、また挑戦できる喜びの方が大きくて、来年の世界選手権で再びトロフィーを持って帰るのが一番の目標です。今度は自分のために勝ちたいです。

ー 藤田さんにとって、「汚れ」とは?

一生懸命練習した“証”のようなものですね。よごれた気球は、それだけ練習した気球だと感じますし、練習した分だけ僕自身もよごれていきますし。『これだけ熱中していたんだな』って振り返るキッカケにもなります。練習を重ねていく過程で、どんどん積もっていくものが「汚れ」なのかなって思います。

“汚れは、良いフライトをするために積み上げていくもの。”

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